ヤブラン 古くから緑化や造園の植栽材料で、花を穂状にたくさん咲かせる。
古くから緑化や造園の植栽材料「ヤブラン」
ヤブラン(藪蘭)は日本や中国、台湾などに分布し、各地の林床などで普通に見られる常緑性の多年草です。ヤブランはキジカクシ科ヤブラン属に分類され、名前に「ラン」とついていますがラン科ではありません。
ヤブランは「リリオペ」という学名で呼ばれることもありますが、別名の「山菅(ヤマスゲ)」や花姿が「ムスカリ」に似ていることから「サマームスカリ」と呼ばれることもあります。
ムスカリ ヒヤシンスとは近縁の花。球根の状態のままで夏を越す。
ヤブランは耐寒性と耐暑性が強く日なたから日陰まで幅広い環境に適応し、病害虫の被害もほとんど見られず土質もあまり選びません。一方ヤブランは1本で株立ちするので、増えすぎる心配が少ない植物です。
ヤブランは古くから緑化や造園の植栽材料として広く用いられ、花壇やコンテナ、和風の庭園によく使用されています。
花を穂状にたくさん咲かせる「ヤブラン」
ヤブランの開花時期は8月~10月頃で、葉の間から花茎を伸ばして花を穂状にたくさん咲かせます。
ヤブランの花色は紫、白、ピンクで、花の後に付ける深い藍色の果実もヤブランの魅力のひとつです。ヤブランの果実は「ジャノヒゲ」の果実に似ていますが、ジャノヒゲは青紫の果実がなるため藍色の果実のヤブランとは区別できます。
ヤブランの草丈は20~40cmで、幅1cmくらいのしなやかで堅い革質の細長い葉をしています。ヤブランは、葉を地際からたくさん茂らせます。
またヤブランの根につく豆粒大の塊は、古くは滋養強壮や解熱に使われる「麦門冬」という漢方薬として利用されてきました。
斑入りや花色の異なるものもある「ヤブラン」
ヤブラン属には5種があり、日本には「ヤブラン」、「コヤブラン」、「ヒメヤブラン」の3種が自生しています。ヤブランの園芸品種には斑入りや花色の異なるものなど20種ほどがあります。
コヤブランは草丈10~20cmと、ヤブランをそのまま小さくしたような見た目をしています。コヤブランは小さいながらも花の数はあまり変わらず、地下茎で増えていきます。
ヒメヤブランはコヤブランと同じくらいの草丈に加えて葉の幅が3mmほど細いことが特徴で、鉢植えや寄せ植えに向きます。ヒメヤブランは葉の感触もヤブランに比べてやわらかく、花がまばらにつきます。
ヤブランとよく似た植物に、「ツルボ(蔓穂)」があります。ツルボはヤブランと同じ多年草で開花時期も同じ、花の色も赤や紫で見分けがつきにくいですが、ヤブランはツルボに比べて葉が固くて色が濃く、長さもあることが特徴です。