ツルボ ムスカリの花に似た形の花を咲かせる。柄の長い傘を畳んだ形。
柄の長い傘を畳んだ形に見立てた「ツルボ」
ツルボ(蔓穂)はユリ科ツルボ属の多年草で、日本を始め、中国、朝鮮半島など東アジアに広く分布しています。
ツルボの名前は、球根の外側の皮をとると、つるつるの坊主頭に似ていることから「ツルボウズ」から転訛して「ツルボ」の名になったという説が有力です。
また、ツルボの別名「参内傘(サンダイガサ)」の由来は、宮中に参内するときに家来に持たせていた柄の長い傘を畳んだ形に見立てたものといわれています。
ツルボが一般の園芸用品店で売り出していることは滅多にありませんが、ツルボの仲間の植物であるヨーロッパ原産の「シラー」は、100種以上もの種類があります。
ムスカリの花に似た形の花を咲かせる「ツルボ」
ツルボの開花時期は8月~9月で、葉の間から20~40cmくらいの花茎を立てて、ムスカリの花に似た形の花を咲かせます。
ムスカリ ヒヤシンスとは近縁の花。球根の状態のままで夏を越す。
ツルボの花びらの色は赤か紫または薄紫色が一般的ですが、花の色が白い「シロバナツルボ」という植物もあります。
ツルボの花びらの数は外花被片3枚、内花被片3枚の計6枚で、花の中央にあるおしべの数も同じ6本です。ツルボの花は下から上に向かって順番に咲いていきます。
ツルボは増えてきたら春に球根を分球して、球根で増やします。ツルボを球根ではなく種まきからはじめた場合は、開花まで2年以上かかります。
重要な栄養源として食べられていた「ツルボ」
ツルボの球根は、戦後の食糧が少ない時代に重要な栄養源として食べられていました。
ツルボの球根はデンプンが多く含まれており、飢饉で食べるものが無い時にどのような草を食べて生き延びれば良いのかを記述した中国・明代の文献「救荒本草(きゅうこうほんぞう)」にも記載があります。
ツルボには薬用効果もあるといわれています。ツルボの球根をすりおろしてガーゼにつけ、湿布として使用すれば火傷、切り傷、神経痛、皮膚病に効果があると従来からいわれてきましたが、近年の研究では、ツルボの実にもさまざまな効能があることがわかっています。最近では医薬品として、ツルボエキスを原料とした「うがい薬」や「化粧水」なども販売されています。
ツルボとよく似た植物に「ヤブラン(薮蘭)」があります。ヤブランはツルボと同じ多年草で、開花時期も同じ、花の色も赤や紫で見分けがつきにくいですが、ヤブランはツルボに比べて葉が固くて色が濃く、長さもあることが特徴です。