ツバキ 文化的にも重要な樹木で、花には香りがない。数多くの園芸品種が生み出されている。
文化的にも重要な樹木「ツバキ」
ツバキ(椿)は古くから庭木として親しまれている日本を代表する花木のひとつで、光沢のある濃い緑の葉をもちます。ツバキは「万葉集」に記述があるほか、縄文時代の遺跡からもツバキの種子などが発見されています。
ツバキの名前の由来には諸説があり、厚みのある葉の意味の「厚葉木(アツハキ)」、つややかな葉の意味の「艶葉木(ツヤハキ)」、光沢のある葉の意味の「光沢木(ツヤキ)」などがありますが、花より葉の美しさが名前の由来とされる説が多いです。
ツバキの野生種としては本州・四国・九州・朝鮮半島南部に分布し樹高の高くなる「ヤブツバキ」、本州の日本海側、雪の多く降る地帯に分布する樹高のやや低い「ユキツバキ」などがよく知られています。ヤブツバキとユキツバキの分布の境界線上の中間地帯には「ユキバタツバキ」というヤブツバキとユキツバキの特徴を併せ持った中間的な存在のツバキが存在し、両者の雑種であると言われています。
ツバキの種子から採られる「椿油」は、髪や肌に良いことから様々な化粧品に用いられています。またツバキの木材は強度が高く質が均一であることから、印鑑や漆器、彫刻の材料として用いられており文化的にも重要な樹木の一つです。
花には香りがない「ツバキ」
ツバキの開花の時期は12月から4月で、花色は赤やピンク、白、複色、混色があります。ツバキの花は雄しべが筒状になっているのが特徴で、花には香りがありません。
またツバキは花が散る時に丸ごとぽろっと落ちるため、江戸時代にツバキが町民に広まるのを阻止しようとした武家の人が「首が落ちるように散るから不吉」と流布したと言われています。
ツバキは常緑で冬でも青々と茂っていることから神社や寺に盛んに植えられているほか、邪を払う木として家の境にも用いられています。
ツバキは中国においては、ロウバイ、スイセン、ウメとともに「雪中の四花(せっちゅうのしか)」として尊ばれています。
ロウバイ ロウ細工のような黄色い花。蘭にも似た香り高い花で、雪中の四花。
ニホンズイセン 原産地は地中海沿岸で、シンプルな美しさ。雪の中に咲く花。
ウメ 花見の対象としてサクラより長い歴史を持ち、観賞価値の高い花と良質の実をつける。
数多くの園芸品種が生み出されている「ツバキ」
ツバキは野生種をもとにして、数多くの園芸品種が生み出されました。特にヤブツバキは、品種改良の中心となった種です。
ツバキの園芸品種には多くの系統がありますが、「ヤブツバキ系」や「ユキツバキ系」、ヤブツバキと他の種との雑種と言われている「侘助(わびすけ)系」などが代表的な系統です。
ツバキと花の特徴がよく似ているものに、「サザンカ(山茶花)」や「カンツバキ(寒椿)」があります。ツバキやサザンカ、カンツバキは互いの交雑で品種は数限りなく、区別が難しいものも少なくありません。
サザンカ 和風の庭木として人気のある、冬の花。3つの園芸品種群がある。
カンツバキ ツバキとサザンカ両種の特徴で、花は微かに香る。枝が横に伸びる。
ツバキの人気は日本だけに留まらずヨーロッパやアメリカでも人気の高い花木で、現在では洋種のツバキの品種改良も積極的に行われています。今日ツバキの園芸品種は、世界では2000種を超しています。