ソメイヨシノ 全国に植えられている桜の約80%で、満開時には株全体が桃色に染まる。
全国に植えられている桜の約80%「ソメイヨシノ」
ソメイヨシノ(染井吉野)は、300種類以上ある桜の品種の1つです。日本で「桜」というとソメイヨシノを意味することが多く、桜の開花期を知らせる「桜前線」の基準にもなっています。
ソメイヨシノの名前の由来は、江戸時代末期~明治初期に染井村(現在の東京都豊島区駒込)の植木職人が品種改良をして作出したためとされています。当初は桜が有名な吉野山にちなんで「ヨシノザクラ(吉野桜)」と呼ばれていましたが、吉野に植えられているのは「ヤマザクラ(山桜)」という別種であることから、後に「染井吉野」と名づけられました。
ソメイヨシノはエドヒガンザクラ(江戸彼岸桜)とオオシマザクラ(大島桜)を交配させて生まれたと考えられており、明治中期以降に明治政府の意向で全国各地に植えられました。現在目にする多くのソメイヨシノは戦後の復興期に大量に生産されたもので、全国に植えられている桜の約80%がソメイヨシノだとされています。
ソメイヨシノは植栽してから15年ほどすると花付きが良くなり、20~40年の期間は見事に花を咲かますが、寿命は60年ほどといわれています。
満開時には株全体が桃色に染まる「ソメイヨシノ」
ソメイヨシノの開花時期は、例年3月下旬〜4月中旬です。ソメイヨシノの開花条件には諸説ありますが、2月以降で気温15度以上の日が、合計23〜25日ほどになると、開花し始めるといわれています。
ソメイヨシノは沖縄を始めとして、日本列島を北上しながら開花していきます。ソメイヨシノは毎年3月下旬頃に九州・四国地方で開花宣言がされ、北海道で花を開くのは5月の初旬となります。
ソメイヨシノの花は枝から房状に伸びて3~5個つき、花色は咲き進むにつれ、桃色から白っぽく変化していきます。ソメイヨシノの5枚の花びらの先には切れ込みが入り、花径は3〜4cmほどです。
ソメイヨシノは花が咲き終わった後に若葉が生えてくるので、満開時には株全体が桃色に染まった様子が楽しめます。
全ての木が限られた原木を元に作られた「ソメイヨシノ」
ソメイヨシノは花を咲かせたあと、5〜6月ごろに、紅色から黒紫色の果実をつけます。
ソメイヨシノの果実は球形で果物の「サクランボ」に似た形をしていますが、渋みがあって食用には向きません。
サクランボ 西アジアの原産で、桜が付ける桃という意味。初夏の味覚。
またソメイヨシノの果実を蒔くと芽は出ますが、ソメイヨシノにはなりません。
ソメイヨシノは自然に繁殖できないため、人の手によって「接ぎ木」や「挿し木」を行うことで数を増やしてきました。ソメイヨシノは全ての木が限られた原木を元に作られた、同じ遺伝子の「クローン」となっています。