ナナカマド 四季を通じて見どころがあり、いろいろな品種がある。果実が赤く熟す。
四季を通じて見どころがある「ナナカマド」
ナナカマド(七竃)は北海道から九州までの深山に分布するバラ科ナナカマド属の落葉樹です。ナナカマドは日本原産ですが近縁種はアジアやヨーロッパの各地に自生し、中国では「花楸樹」と呼ばれています。
ナナカマドの名前の由来には、材が堅く7回かまどに入れても燃え尽きないという説と、良質の炭を作るには7回かまどに入れる必要があるという説がありますが、実際にはナナカマド材はよく燃えることが知られています。
ナナカマドの別名には「オヤマサンショウ」や「ヤマナンテン」がありますが、生け花の世界ではナナカマドを「ライデンボク(雷電木)」あるいは「ライデン」と呼ぶことが多く、「赤い実のなる木」を意味する「赤実成り木(あかみなりき)」の「あ」が忘れられて「かみなりのき」になったことに由来すると言われています。
ナンテン 難を転じる縁起木。栽培の歴史が古く、殺菌・防腐効果がある。
ナナカマドは春の芽出し、新緑、秋の紅葉、雪中に残る赤い果実と四季を通じて見どころがあり、盆栽や公園、庭園に植栽されたり、北国では街路樹として使われることが多い樹木です。
果実が赤く熟す「ナナカマド」
ナナカマドの花の開花時期は4月下旬から7月頃で、直径6~8mmほどの小さな花が集まって直径15~20cmの房状になります。
純白のナナカマドの花には5枚の花弁と20本の雄しべ、そして3~4個の花柱があり、「ハナアブ」や「ハナバチ」がよく群がっています。
ナナカマドの果実が赤く熟すのは10~11月です。果実は直径5~6mmの球形で落葉後もしばらく枝に残り、熟しきった頃にツキノワグマや野鳥が好んで食べます。ナナカマドの果実の毒素「シアン化合物」や苦味成分は、霜が当たることによって加水分解されることが知られています。
日本のナナカマドの果実は一応食べられますが、果実の苦味や酸味が強いため、果実酒として利用されています。
いろいろな品種がある「ナナカマド」
ナナカマドにはいろいろな品種がありますが、「セイヨウナナカマド(西洋七竈)」はヨーロッパからシベリアのユーラシア大陸の北部に広く分布しており、フランスではセイヨウナナカマドを「ツグミの木」と呼んでいます。セイヨウナナカマドの果実は日本のナナカマドよりも一回り大きく、色は橙色が強いのが特徴です。日本のナナカマドに比べてセイヨウナナカマドは、果実の苦味も少ないのでジャムや料理の添え物として利用したり、ゼリーなどにして食べられることがあります。
「タカネナナカマド(高嶺七竈)」は樹高が1~2mで高山に分布し、あまり背が高くならないので盆栽にもよく用いられます。「ウラジロナナカマド(裏白七竈)」は葉に光沢がなく、裏面は白味を帯びています。
「ナンキンナナカマド(南京七竈)」は関東以西に分布する樹高2~3mの低木で、別名を「コバノナナカマド」あるいは「ヒメライデン」ともいいます。ナンキンナナカマドは初夏にクリーム色の花を咲かせます。「サビバナナカマド(錆葉七竈)」は花や葉の裏面に褐色の毛が生じます。
ナナカマドに似ている木のうち「ホザキナナカマド(穂咲七竈)」や「ニワナナカマド(チンシバイ)」は同じバラ科ですが、属は異なります。また「アロニア(チョークベリー)」は花の構造がナナカマドに似ていることから、ロシアでは「黒い実のナナカマド」と呼ばれており、「ブルーベリー」や「ハスカップ」より豊富なポリフェノール成分を含有しているのが特徴です。