ミツマタ 早春に枝の先に花が咲き、切り花としても人気がある。高級和紙の原料。
早春に枝の先に花が咲く「ミツマタ」
ミツマタ(三又)は、ジンチョウゲ科ミツマタ属に属する低木です。ミツマタは、2~3mほどの高さに育ちます。
ミツマタは早春に枝の先に花が咲き、その後に同じ場所から3本の枝が伸びます。この独特の枝ぶりから、「ミツマタ」の名がついたといわれています。
ミツマタが初めて文献に登場するのは16世紀とされ、その頃に原産地の中国から伝来したという説があります。一方で奈良時代(710〜794年)の末期に成立したとされる『万葉集』には「サキクサ(三枝)」と記されている植物があり、これがミツマタであるという説もあります。
ミツマタは山の中に自生する植物でもあり数十、数百のミツマタが集まって群生地を作ることで有名な植物です。開花を迎えたミツマタの群生地は、神秘的かつ幻想的です。
切り花としても人気がある「ミツマタ」
ミツマタの開花時期は、3月~4月です。ミツマタは日陰に強く、オレンジ色や黄色の花を集めたように咲かせます。
うつむくように下を向いて咲くミツマタの花には芳香があり、小さな花が集まって半球形をつくっています。ミツマタの小さな花には花びらはなく、花びらのように見えるのは筒状の萼の先端が4つに裂けて反り返ったものです。
ミツマタの花は、切り花としても人気があります。特にドライ加工したミツマタの枝は、上品な質感と特徴的な見た目がインテリアとして注目されています。
ミツマタにはいくつかの種類がありますが、代表的なものとして「ベニバナミツマタ」と「タイリンミツマタ」が挙げられます。ベニバナミツマタは「アカバナミツマタ」とも呼ばれ、通常のミツマタとは異なり赤い花を咲かせる品種です。タイリンミツマタは大きな花を咲かせ、見応えがあります。
高級和紙の原料「ミツマタ」
ミツマタは、高級和紙の原料としても利用されています。紙の原料として使われるのは、ミツマタの樹皮です。
和紙の原料として使われるものには「コウゾ」や「ガンピ」がありますが、ミツマタで作られた和紙はこれらに比べて丈夫で紙の表面に光沢があるため高級感のある紙を作ることができます。
日常生活で使う紙幣もミツマタを原料として作られており、繰り返しの使用や水濡れにも強いという特徴があります。
ミツマタの樹皮を利用する際には枝を切って収穫し樹皮以外は焚き木などに使われていましたが、近年はこれを炭に加工したりその炭を使った石けんなども作られています。