フキノトウ フキの花の蕾で、フキの仲間だけ出てくる。摘んだばかりのものは、とても清々しい香り。
フキの花の蕾「フキノトウ」
日本の山野に自生するフキ(蕗または苳)はキク科フキ属の宿根草で、数少ない日本原産の山菜です。丸く大きな柔らかい葉が特徴のフキは、北海道から沖縄まで広く分布しており、平安時代から食用にされてきました。
フキの日本古来の呼び名は、「ヤマフフキ(山生吹)」です。ヤマフフキの由来は、自生地が山地で、「生吹」は生長が早く、繁茂するという意味からきています。
フキノトウ(蕗の薹)とはフキの花の蕾(つぼみ)のことをいいます。フキは地下茎で広がる植物で、早春に株元から蕾が成長して出てきます。 フキノトウの別名は「款冬(かんとう)」や「蕗の姑(ふきのしゅうとめ)」ともいい、毎年同じ場所で収穫を楽しめます。
フキノトウは苦味健胃薬(くみけんいやく)として胃のもたれ、胃痛に用いられてきました。また、咳を止めて痰(たん)をとることにも効き目があるとされています。
摘んだばかりのものはとても清々しい香り「フキノトウ」
秋田県の県花でもあるフキの開花時期は、2月~3月頃です。フキノトウは寒さから身を守るように淡い緑色の苞(ほう)にくるまっており、気温の上昇とともに苞が開いて花が姿を見せます。
フキの花は、雄花と雌花とに分かれています。フキの雄花は黄色で、花が咲き終わると枯れていきますが、フキの雌花は白い花を咲かせた後、茎が伸びタンポポのような小さな綿毛ができて風にのって種子を拡散します。
フキは開花後に地下茎を通じて繋がっている葉芽(はめ)がのびて、初夏に大きな葉を開きます。この葉の茎のような部分は食用になりますが、厳密には茎ではなく「葉柄(ようへい)」といわれ、茎につながる柄(え)のような部分です。フキノトウは採取されたあと、そのまま天ぷらや煮物にして食用にされますが、葉柄の部分は重曹や木の灰などで煮て灰汁(あく)を抜くか、塩漬けにしてから調理します。
フキノトウは通常、花が開く前の苞に包まれた蕾の状態が、食べるのに適しています。フキノトウは摘んだばかりのものはとても清々しい香りがあり、えぐみも少ないのですが、時間と共にあくが強くなり苦みやえぐみが強くなります。フキノトウの根元の切り口を見て、黒ずんでいないものが新鮮です。また大きくなり過ぎたフキノトウは苦味も強すぎて美味しくないので、小ぶりのフキノトウを選んだほうが良いです。
フキの仲間だけ出てくる「フキノトウ」
市場に出回るフキは栽培品種が多く、2mにもなる「アキタブキ」や「愛知早生(あいちわせ)」、「水フキ」などのほかに、野生種を含めると200種近くあるとされています。北海道の伝承に登場する小人「コロポックル」は、フキの大きな葉っぱで住居の屋根を葺いていますが、この大きな葉のフキは北海道の螺湾(らわん)川に沿って自生する「ラワンブキ」というアキタブキの一種です。
見た目がフキによく似ている植物に、「ツワブキ(石蕗)」があります。ツワブキは「蕗」という文字を用いますが、フキの仲間ではありません。宮崎県日南市では市の花に指定されているツワブキは日本原産の植物で、九州では古くから食べられています。現在山菜として出荷されているツワブキも、大分県や鹿児島県、宮崎県などが中心です。九州名産の「キャラブキ」は、ツワブキを佃煮にしたものです。
ツワブキ 菊に似た黄色い花で、フキとは別種。「キャラブキ」の原料。
フキとツワブキの違いは、フキは冬には地上部が無くなりますが、ツワブキは常緑で秋から冬にかけてキクに似た黄色の花を咲かせます。またフキの葉は薄く光沢が無く産毛のような毛が生えていて、触ると僅かにざらざらとしていますが、ツワブキの葉は厚みがあり、表面がつるつるとしていて光沢があります。そしてフキは初春になると、足元にフキノトウが出てきますが、ツワブキにフキノトウは出てきません。
なお一見緑色のワサビのように見えるフキの地下茎は、有毒なため食べることができませんが、ツワブキの根茎は河豚(ふぐ)や鰹(かつお)による中毒の薬となります。