フジ 葛藤の語源で、長い房状の花を下垂させて咲かせる。美しい女性の例えにも使用される。

葛藤の語源「フジ」

フジ(藤)は日本原産の花木で、現在では世界各地で植えられています。フジはつる植物ですが、「アサガオ」や「クレマチス」と違い生長すると幹は太くなり木質化します。

アサガオ 日本で最も発達した観賞用植物。多くの品種があり、変化に富む。

クレマチス つる性植物の中でもっとも人気のある草花のひとつで、品種によって開花時期も異なる。

フジという名の由来には長く垂れ下がる花の様子が「フキチリ(吹き散り)」または「フサタリハナ(房垂花)」と呼ばれていたのが転訛してフジになったとする説や、つるがムチの材料になることからムチがフジに転訛したとする説などがあります。

フジのつるは丈夫で簡単に切れないことで知られており、フジとクズ(葛)が絡み合ってどうにもならない様から「葛藤」の語源と言われています。フジのつるは昔から漁網、籠、山登りのための吊り橋や臨時のロープ、籠に使われ、派手なお祭りで知られる諏訪神社の御柱にも用いられています。

自生のフジは林縁や林内で他の木や岩に絡みついて育ちますが、フジの特性を活かして作られた「藤棚」は、公園や庭園、遊歩道など身近な場所にあります。

長い房状の花を下垂させて咲かせる「フジ」

フジの開花時期は4月中旬から5月上旬で、最近では気温の上昇と共に花の開花時期が年々早まっています。フジの花は風でも散りやすく強風が数日続くと、つぼみのまま散ってしまうこともあります。

フジの花の特徴は長い房状の花を下垂させて咲かせるところで、それぞれは直径2㎝程度の花です。フジの花には芳香があり、満開の藤棚の下にいると甘い香りが漂ってくることがあります。

フジの花は上の方から咲き始め、花の先端が咲く頃には上の方の花が萎れ始めています。フジは上の方の花が開いていて下の花はまだ少しつぼんでいるくらいが、見頃だと言えます。

フジの中で有毒成分が含まれるのは豆の部分で、フジの花には毒はありません。フジの花を触ったり摘んだりしても毒に当たるようなことはなく、フジの花は洗って天ぷらにして食べることができます。

美しい女性の例えにも使用される「フジ」

フジには多くの園芸品種がありますが、身近なところで見かける藤の花の多くは「ノダフジ」か「ヤマフジ」です。花色は淡い紫色の他に、紫、ピンク、白などがあり、ノダフジはつるが上から見て右巻き、ヤマフジは左巻きになります。

ノダフジは日本原産のフジで、花序と呼ばれる房状の花の部分は30㎝~60㎝程度あります。

ヤマフジも日本固有のフジで、一つ一つの花はノダフジよりも少し大きく2.5㎝くらいありますが花序の長さは10~20㎝程度と短めです。

フジの花はその優美さから古来より日本人に愛され、美しい女性の例えにも使用されてきました。歌舞伎や日本舞踊でも有名な「藤娘」は、藤の花の精が美しく舞う演目です。フジは「古事記」や「万葉集」にもその名が登場するほど日本文化との関わりは深く、多くの芸術品や詩歌のモチーフ、紋所のデザインなどに使われています。

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