キク 古くから日本とゆかりのある花。秋を代表する花の1つで、観賞用だけではない。
古くから日本とゆかりのある花「キク」
キク(菊)は、キク科キク属の一年草または多年草植物の総称です。キクは奈良時代に、中国から渡来してきました。
キクの名前の由来は行き詰まるという意味の「窮まる(きわまる)」を語源とするもので、1年の最後に咲くことから名付けられたとされています。「菊」という漢字は中心に向かって巻き込むように咲く花の形を、手のひらに米をおいて握った様子になぞらえたものです。
キクの花は和歌でも多く詠まれ貴族の間で観賞用として栽培されていましたが、江戸時代には庶民の間でも品種改良が行われ広く栽培されるようになりました。9月9日の「重陽の節句」では、キクの香りを移した「菊酒」を飲んで邪気を祓い長寿を願う風習があります。
キクは秋の季語とされるように、古くから日本とゆかりのある花です。キクは種類が多く様々な姿を楽しむことができる魅力があり、開花時期も長いことから人気の高い花です。
秋を代表する花の1つ「キク」
キクは種類によっても見頃の時期が異なりますが、一番多く栽培されている「秋菊」は9月~11月が見頃とされています。「夏菊」は6月~7月、「冬菊」は12月~1月が見頃となっています。
キクの花色は赤、ピンク、黄、オレンジ、白、紫、緑、茶、複色、青などあります。キクの花びらは一重もしくは八重で、大きさによって「大菊」「中菊」「小菊」の3種類に分けられます。
キクは秋を代表する花の1つですが、日が短くなると花芽を付ける性質を利用して日照時間を調整されたものが周年栽培・販売されています。
国内での切り花生産量がもっとも多い花はキクで、切り花の全出荷量の4割を占めます。キクは仏花のほかにも、フラワーアレンジでも欠かせない存在になりつつあります。
観賞用だけではない「キク」
キクは日本で品種改良が加えられたものを「和菊」、欧米で生み出されたものを「洋菊」と園芸上は区別します。和菊は幕末の日本からイギリス人がいくつかの品種を持ち帰ったことにより、欧米において人気となりました。
和菊は日本で独自に発展し、江戸時代頃につくられたものは特に「古典菊」とされています。和菊の多くは放射状に花を咲かせ、天皇家の家紋にもなっている菊花紋章の形は、一文字と呼ばれる一重咲きの和菊がモデルとなっています。
洋菊は欧米で発展し、代表的なものとしては「スプレーマム」や「ポットマム」などがあります。洋菊のサイズは小〜中菊のものが多く、花の色が豊富なのが特徴で、現在は日本でも鉢植えなどで多く育てられています。
キクは観賞用だけではなく、長寿の花として食用で使われる文化もあります。古代の中国でも薬用として使用され、日本では江戸時代に延命楽や阿房宮といった品種が「食用菊」として栽培されるようになりました。